東京都渋谷

まきのさんが渋谷の荒木山の自宅にいるとき、関東大震災が起きた。牧野富太郎自叙伝に以下の文章を書いている。

「私は元来天変地異というものに非常な興味を持っていたので、私はこれに驚くよりもこれを心ゆく迄味わったといった方がよい。当時私は猿又一つで標品を見ていたが、坐りながらその揺れ具合を見ていた。そのうち隣家の石垣が崩れ出したのを見て家が潰れては大変と庭に出て、庭の木につかまっていた。妻や娘達は、家の中にいて出て来なかった。家は幸いにして多少の瓦が落ちた程度だった。余震が恐いといって皆庭に筵むしろを敷いて夜を明したが、私だけは家の中にいて揺れるのを楽しんでいた。」

「その揺れ方をしっかと覚えていなければならんはずだのに、それをさほど覚えていないのがとても残念でたまらない……もう一度生きているうちにああいう地震に遇えないものかと思っている。」